永住権と公的扶助審査開始

2019年8月14日に国土安全保障省は、亡命者・難民・家庭内暴力や人身販売の被害者等一部の例外を除き、一般に外国人の入国や永住権申請時に、将来アメリカ政府の公的扶助対象になる可能性があるかを調べる新しい法律を発表しました。しかしながら、複数の連邦法廷から暫定的差止命令が出されたために、10月15日に予定されていた法律の施行が遅れていました。その後、2020年1月27日に連邦最高裁が下級法廷の差止命令を解除したために、2月24日からこの法律が施行されます。ただし、イリノイ州の連邦下級法廷の暫定差止命令は未だに解除されていないため、この新法は現時点ではイリノイ州の住民には適用されません。

今までの規定では連邦・州・地元政府による現金補助を受給した場合は永住権申請に影響がありましたが、今回の新規定は永住権拒否の対象となる公的扶助の範囲をさらに広げ、連邦政府補助によるMedicaid (21歳未満や妊婦を除く)、補助的栄養支援プログラム、Section 8プログラムによる住宅補助金、連邦政府による住宅補助等のプログラムも対象となります。ただし、移民申請者の家族による公的扶助の受給、さらに緊急時の公的扶助の受給等は対象となりません。

公的扶助の新規定は、主に家族スポンサーによる永住権申請者に適用されます。過去には申請者が申請時点において自分と家族の生活を賄う十分な収入や資産があることを証明すれば、過去に公的扶助を受けていても永住権申請時にはさほど問題視されませんでした。ところが、新規定施行により、今後は、申請者が将来のいかなる時点においても36ヵ月間に合計で12ヵ月以上特定の公的扶助を受ける可能性があるかを審査されます。例えば、1ヵ月の間に対象となる公的扶助を2種類受けた場合は2ヵ月の受給とみなされます。

家族スポンサーによる永住権申請の場合、従来は扶養宣誓供述書を提出し、申請者の所得や資産情報を開示することにより、扶養家族を養う財的条件を備えていることを証明することができましたが、今回の規定で、新たにI-944自給自足宣誓フォームの提出を義務付けられます。I-944には申請者の家族、収入、資産、負債、クレジットスコア、健康保険、教育、スキル、外国語、雇用などの情報を記入します。これらの情報をもとに、将来のいかなる時点においても公的扶助の対象にならないかを総合的に審査されます。例えば、永住権申請前の36カ月の間に合計12ヵ月以上対象となる公的扶助を受けていれば、マイナス要因とみなされます。逆に、連邦政府規定の法廷貧困レベルの250%の収入があれば、プラス要因とみなされます。新規定施行前の受給は対象となりませんが、新規定施行以前からすでに移民申請拒否の対象となるような公的扶助を受けていた場合は、その受給期間も審査の対象となります。公的扶助による入国拒否理由を克服するためにbond (担保金) を支払うオプションもありますが、担保金は最低でも$8100が必要となります。

各国の米国大使館や米国領事館を統括する国務省は既に永住権審査基準を厳しくしており、特に比較的収入レベルの低い南米からの家族スポンサー移民が公的扶助を理由に永住権申請が却下される比率がかなり高くなっていました。しかし、各国の米国大使館や米国領事館でも、新しい公的扶助審査の法律の施行が遅れていました。今後は移民局と同様、各国の米国大使館や米国領事館でも、申請書類に公的扶助に関する質問を増やし、この法律を施行すると予想されます。これを受けて、南米以外にも全体的に家族スポンサーによる永住権の申請基準が一層厳しくなることが予想されます。従って、申請前に公的扶助の疑いをクリアする十分な証拠書類がそろっているか確認することが重要となります。

子供のビザ

子供同伴の駐在員が帰任命令を受けた時、まずは子供の退学時期、日本の帰国子女受入校の有無、受入時期、受入条件など子供の進学事情を調べなければなりません。では、親が帰任した後、子供の滞在資格はどうなるのでしょうか?

【同伴家族ビザは21歳まで】 一般に、子供は同伴家族のビザを取得して滞在しています。親が帰任した時点で、家族は同伴家族としての滞在資格を失います。駐在員帰国後も家族がアメリカに残るためには、家族は駐在員帰国前に別のビザ滞在資格に変更する必要があります。また、子供は21歳に達した時点で同伴家族としてのビザは認められなくなるので、アメリカで引き続き学校に通うためには21歳に達する前に学生ビザに切り替える必要があります。

【大学生のビザ】 大学に進学する子であれば、F1学生ビザに変更申請することができます。F1への変更申請は、アメリカ国内で移民局に滞在資格 (I-94) をF1に変更申請を行うか、或は、日本の米国大使館か米国領事館でビザ・スタンプを申請する方法があります。アメリカ国内で滞在資格 (I-94) をF1に変更する場合、申請先移民局によって審査に3か月から7か月ほどかかるので、かなり前に申請を行う必要があります。アメリカ国外に頻繁に出入りする子であれば、アメリカに入国するためにF1ビザ・スタンプが必要となるので、日本の米国大使館か米国領事館でビザ面接を行い、F1ビザ・スタンプを取得する必要があります。日本でビザ・スタンプを申請した場合、面接に問題がなければ一週間以内にビザ・スタンプが指定住所に送られてきますので、新学期が始まる前に比較的短時間にビザを取得することができます。ただし、F1ビザは移住する意思をみせてはいけないビザなので、父親の同伴家族としてすでにアメリカに長期間滞在している子であれば、F1を申請した学校を卒業した後に日本に戻る意思がないことを疑われ、F1ビザの発行を拒否される可能性があるので要注意です。

【高校生のビザ】 子供は親の同伴家族ビザを持っている間は公立の学校の授業料は免除されますが、親が帰任したあとは同伴家族の滞在資格を失うので、無料で学校に通うことはできません。高校生の場合、親の帰任後引き続き公立高校に通うためには、F1ビザを申請することがきますが、公立高校に関しては、F1ビザは1年間しか認められません。私立校であればF1ビザの期間に制限はありません。また、F1ビザで公立高校に通う場合は、一人頭にかかる授業料の支払いを義務付けられます。

【小・中学生のビザ】 小中学生の場合は、F1学生ビザで公立校に通うことはできませんが、私立校に通うことができます。この場合、全寮制の学校にいれるのか、地元も家族のホームステイをさせてもらうのかなど、子供の世話は誰がするのか学校と相談しながら決める必要があります。

【母親の同伴ビザ】 子供が学生ビザに切り替えた場合、母親には家族用のビザはありませんが、母親はB2観光ビザ滞在資格に変更したり、また一旦国外にでてビザ・ウエイバー (ESTA) で米国に入国するも可能です。しかし、ESTAでの滞在は一回に最長90日まで、一年間に合計で180日以上滞在することができません。ビザ・スタンプが10年間有効なB2観光ビザを取得することもできますが、一回の滞在期間は入国事情に応じて通常90日くらいしかもらえません。一回に90日以上の滞在期間をもらうのはまれです。B観光ビザはESTAとは異なり、アメリカ国内で滞在期間を延長することができますが、B2観光ビザで長期滞在すると、次回の入国時に短期滞在目的ではないと判断され、入国を拒否される可能性があるので要注意です。

中には母親が滞在中に語学学校に通ったり、正規の学位プログラムに入学する場合があります。この場合は、母親がF1学生ビザに変更申請することで、21歳未満の子どもは同伴家族用のF2ビザを申請することができ、引き続き現地校に通うことができます。ただし、母親の学生ビサ申請の理由が自分の学業目的ではなく、子供の米国での就学目的であると判断されると、申請は却下される可能性があります。

【永住権】 父親が駐在中に家族と一緒に永住権を取得した場合、のちに父親が他国に転勤になっても、子供と母親はそのまま米国に残ることができます。仮に父親が米国を長期不在にして永住権が失効した場合でも、母親と子供は、永住権保持者としてそのまま米国内で生活を営むことができます。永住権を取得していれば、州立大学であれば州内住民用の安価な学費が適用され、各州奨学金やローンの申請もできるようになり、また、在学中のバイトや就職活動も自由になります。

【問題点】 日本の帰国子女枠での編入・受験の条件を満たすために、親の帰任後も学期終了まで数ヶ月間だけ米国に滞在したい場合、また、父親の帰任後もアメリカの大学に進学を希望する場合があります。帰任時期を学年度末に合わせることができれば、父親はその間アメリカに籍を置いたまま、日本に出張することもでき、家族のアメリカでの滞在資格もそのまま維持することができます。しかしながら、現実問題として、帰任時期が子供の学期終了時期と一致しないことが多いために、帰国後の子どもの進学に影響がでることがあります。子供同伴の派遣社員に対しては、例えば、人事異動を計画する時に、現地校の学期終了時期などに合わせて帰任時期を決定するなど、子供の学校事情に配慮したよりフレキシブルな人事方針を採用することができれば、子供の学業が中途半端で退学することを避け、編入条件を満たし、編入時期に合わせて帰国することができるでしょう。子供の学校計画がしっかりしていれば、語学力や国際センスを持ち合わせた将来日本の経済担ってくれる貴重な人材の育成につながると思います。

2020年度の移民法改正の動き

2019年度は移民法や移民局の内部方針などに多大な変更が見られ、移民局での書類審査やアメリカ大使館や領事館でのビザ面接審査は非常に厳しくなりました。2020年度も引き続き、様々な面で変化がみられる模様です。2019年度に提案された法案の中でも2020年度に討議が持ち越されるものと、2020年度から施行が予定されるものとがあります。ここに、2020年度に注目すべき法案について説明します。

昨年2月に提案された2019年の高度技能移民法の公平性案に訂正が加えられ、現時点では雇用ベースの永住権申請に関して、国別年間枠を取り除く法案が検討されています。永住権申請者が多いインドや中国には、優先枠によっては現時点で2年~10年以上の待ち時間があります。国別の年間枠がなくなると、インドや中国の待ち時間は大幅に短縮される半面、日本を含み現在待ち時間のない国には待ち時間ができることになります。2017年度から雇用ベースの永住権申請には全員面接が義務付けられましたが、場所によって面接の待時間が6カ月~3年以上あるため、それまではI-485を申請後4カ月~8カ月ほどで発行されたグリーンカードが今では1年~3年以上ほどかかるようになりました。この法案が可決すれば、全体の年間枠が増やされない限りは、インドや中国以外の国籍保持者の永住権取得までの時間がさらに長引くことになります。

永住権申請過程の最後の滞在資格の変更 (I-485) を提出するまでに待ち時間がある場合、ビザ種類によってはその間の旅行や転職に制限がでてきます。このような不便をなくすために、雇用主スポンサー申請 (I-140) が承認されていれば、国別の待ち時間の有無にかかわらず、I-485を提出できるように提案されています。I-485を提出後、実際に審査されるまで待ち時間が長くても、I-485の提出と同時に就労許可証と旅行許可証を申請できるので、I-485を提出後6カ月が経過すれば、同類職種であれば転職することができるようになります。また、配偶者も就労許可書を入手できるので、自由に仕事をすることができます。なお、H1BやLビザは移民をする意思を示してよいビザなので、永住権申請中も国外からの出入りは自由ですが、それ以外のビザ保持者は、旅行許可書を入手したら、永住権申請中も自由に国外に出て入国することができるようになります。

この他には、今後6年間にわたり人材不足の職種には4,400程ビザの枠を設け、今後9年間にわたりインドや中国以外の国に在住する申請者に永住権申請枠の5.75%を充てる法案も提出されています。家族スポンサー移民申請の方では国別枠の数を増やすよう提案されています。短期就労ビザでは、50名以上社員を雇用する会社でH1BやLビザ社員が50%以上いる会社は、H1B社員をそれ以上スポンサーできない法案が出されています。

上記の移民法案以外にも、2020年4月には、雇用主の移民スポンサー申請 (I-140) と永住権への滞在資格の変更 (I-485) の同時申請を取りやめる法案が提出される予定です。現在、雇用ベースによる永住権申請では、国別年間枠による待時間のない国の申請者は、雇用主のI-140とI-485を同時に提出することができますが、この法案が可決すれば、I-140が承認されるまでI-485を提出できなくなります。I-485を提出できなければ、就労許可書と旅行許可書も一緒に申請できないので、ビザ種類によっては就労や旅行制限を受ける期間が長くなります。

2015年にH4保持者はH1B配偶者が永住権の申請を始めて一定条件を満たせば就労許可証 (EAD) を申請することができるようになりましたが、H4保持者がIT関連のアメリカ人の職を奪っているというクレームがでているために、H4保持者のEAD申請権利を抹消しようという法案があがっています。2020年3月には再度詳細な規定が検討される予定です。従って、EADを使って就労しているH4保持者は、EAD申請ができなくなる場合に備えて、その他の就労ビザのオプションも検討したほうがよいでしょう。

飲酒運転のビザへの影響

年末も近くなり、感謝祭、忘年会また新年会とアルコールが出回る行事も多くなってきました。アメリカは飲酒運転に対して大変厳しく取り締まっている国なので、“ついうっかり” ということにならないよう、アルコールとビザの関連について説明します。

日本では自動販売機でアルコールが販売されたり、道端で酔っ払いを目にすることも珍しくはありませんが、アメリカでは車内或は公共の場でふたの開いたビールをもっているだけでも逮捕されるところもあります。レストランでも酔っ払いに対して無制限に酒を提供することもできません。酔っ払いが後に飲酒運転や人身障害などの事故を起こした場合、酔っ払っていると知りつつ酒を提供した者が責任を問われることもあります。

2015年11月より、米国内にて飲酒運転 (DUI=driving under the influence) で逮捕されたら、各国の米国大使館か米国領事館から本人にビザ取消通知書が届くようになりました。ビザを取り消されるのに有罪判決は必要ではなく、5年以内にDUIの逮捕歴があればこの対象になります。ビザ・スタンプの取り消しは次回出国時に効力を発するので、一旦出国したら再度入国する際に既存のビザ・スタンプは使えなくなります。出国をしたら、オンライン・ビザ申請用紙DS160に飲酒運転による逮捕情報を開示し、裁判書類を添付し、再度ビザの申請をしなおす必要があります。尚、国外に出ている間にビザ取消通知が届いた場合、米国に入国できなくなる可能性があるので、飲酒運転の逮捕歴のある人は、米国を出国する前に人事に連絡をとり、国外でのビザの再申請に関して事前に準備する必要があるでしょう。

飲酒運転で逮捕された場合、初犯であれば、過去の逮捕歴、違法物所持、第3者に対する人身障害、など重度の追加違反行為がない限りは、ほとんどの州では軽犯罪の判決が言い渡されます。軽犯罪だと、判決文を全うすれば、基本的には滞在資格に影響したり、将来のビザ申請を妨げるものではありません。しかし、アメリカで犯罪歴があると将来ESTA (ビザ・ウエイバー) を使って入国することはできなくなるので注意が必要です。ESTAが使えない場合、観光や短期出張目的であればB1/B2の短期商用・観光ビザを申請することができます。

犯罪歴や逮捕歴がある人は、ビザ申請時に米国大使館や米国領事館に裁判記録を一式提出します。FBIのバックグランドチェックをされるので、ビザ申請は通常よりも長くかかることがあります。また、在外公館は、いままで過去5年以内に飲酒運転の逮捕歴がある人、もしくは過去10年間に2回以上飲酒運転の逮捕歴がある人、またアルコール依存症だと思われる短期ビザ申請者に対しては、大使館指定医師からの健康診断書の取得を要請することがあります。診断の結果、本人が自分自身や社会に脅威や危害を加えるような障害がない、もしくはアルコール依存症ではないと判断されれば、ビザは発行されます。しかしながら、無事にビザが発行されても、アメリカに入国する際に再度過去の犯罪歴や逮捕歴について審査されます。米国市民以外のビザ保持者は永住権保持者も含め、入国時に問題があることが発覚すれば第2次審査室につれていかれ、過去の違反行為に関する書類の提示を求められることがあります。従って、過去に違反歴がある人は入国時の質問に備えて警察の逮捕記録や裁判所の判決記録を証拠として持参した方がよいでしょう。いずれにしろ、“飲んだら運転しない!”を心がけましょう。

STEM-OPT監査

移民税関捜査局 (ICE) は、今年の7月以降STEM-OPT研修生の監査を強化しています。Optional Practical Training (“OPT”) とはアメリカの大学で学位取得を目的とする学校にフルタイムで9ヶ月以上在籍した学生が、在学中もしくは卒業後に申請できる就労許可証のことです。OPTを使って卒業前、後合わせて合計で12ヶ月まで研修・就労することができますが、2016年5月より、理数系 (STEM) の学生であれば、OPTをさらに24ヶ月間延長することができるようになりました。この延長をSTEM-OPTといいます。

移民税関捜査局は、STEM-OPT研修生を採用している会社を訪問し、STEM-OPT研修生とその上司 (人事か管理職) と面談して、STEM-OPTのコンプライアンス状況を確認します。具体的には、雇用主が政府に提出したフォームI-983の研修内容をレビューし、研修内容が専門分野と関連しているか、学習目標が明確にされているか、研修内容に変更がないかなどを調べられます。また、STEM-OPT研修生がアメリカ人社員の職を奪っていないか、STEM-OPT研修生の賃金が同職に就くアメリカ人社員の賃金より低く設定されていないか、などを調べられます。その他には、研修の進行状況と学習目標の達成状況に関する学生の自主評価、さらに雇用主が大学のインターナショナル・オフィスのDSO (Designated School Official) への報告義務を順守しているかも調べられます。

監査に対応するために、雇用主はOPT-STEMの関連法を順守しているかを確認し、移民捜査局エージェントが来た時に誰が対応するかなど事前に準備を行ったほうがよいでしょう。下記に注意点を挙げます。

  • 研修内容が大学の専攻内容と一致しているか確認、
  • 学習目的がはっきりとしているか確認、
  • どのように学習目標を達成するのかを確認、
  • 研修内容に変更あれば、新しい研修内容をI-983フォームに記載し、大学に提出したか確認、
  • 研修生の給与レベルが同職種の社員より低く設定されていないことを確認、
  • 研修学習目標達成状況に関し、研修生と雇用主によるDSOへの報告義務を確認、
  • 研修終了後、或は途中で終了した場合、5日以内に大学のDSOに報告したか確認、
  • 研修生が他のフルタイムやパートタイム社員、或は短期契約社員の職を奪っていないことを確認。

もし、STEM-OPTの規定を順守していなければ、滞在資格違反を問われ、オーバーステイのカウント、さらに裁判所出頭命令の通知を受けることも考えられます。5月に発表された政府の新しい方針により、滞在資格に違反があれば学生ビザ保持者も不法滞在扱いとなり、オーバーステイが180日を超えると3年間アメリカへの入国禁止、オーバーステイが365日を超えると10年間アメリカへの入国禁止処分となりますので、雇用主も学生もSTEM-OPTのコンプライアンスに漏れがないよう十分に注意する必要があります。

公的扶助に関する法律の施行一時差し止め

尚、先月号で説明した、2019年10月15日から施行予定だった公的扶助受益者のビザ申請に関する法案は、法廷から最終的な判断がでるまで、一時的に施行が差止になりました。

DV-2021 抽選による永住権

2021年度の永住権抽選 (DV-2021) の受付が東部時間2019年10月2日 (水) 正午12時にはじまり、2019年11月5日(火)正午に終了します。抽選による永住権とは、アメリカ合衆国を構成する人種の中で、移民比率の比較的低い国からの移民の数を増やそうとする目的で、年に一回国務省によって行われる移民多様化のことです。2020年度には5万枠の抽選永住権が割り当てられています。申請は無料で、オンラインで申請を行ない、申請者はコンピューターにて無作為に選ばれます。対象となるのはアフリカ、アジア、ヨーロッパ、北米、南米とオセアニアなど6つの地域から過去5年間において、移民ビザの発給少ない国で出生した人で、抽選で年間合計5万件の移民ビザが割り当てられます。日本で出生した人も抽選の対象となりますが、 過去5年間に5万人以上の移民を米国に送り出した下記の国の出身者は対象にはなりません:バングラディッシュ、ブラジル、カナダ、中国 (本土生まれ)、コロンビア、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ハイチ、インド、 ジャマイカ、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、韓国、イギリス (北アイルランドを除く) とその領土、ベトナム。香港、マカオ、台湾出生者は対象となります。本人が対象国で出生していなくとも、配偶者が対象国で出生していれば、その配偶者の出生国で申請することも可能です。また、対象とならない国で出生しても、本人の出生国が両親の出生国でない、或は本人出生時にいずれの親も当該国の合法的居住民でなかった場合、抽選対象国で出生した親がいれば、その親の国の枠で申請することもできます。一人一回だけの抽選ですが、本人の申請とともに配偶者と21歳未満のお子様も一緒に申請することができます。一人につき2回以上申請をすると、すべての申請が無効となります。

抽選による永住権を申請するには、申請資格を満たさなければなりません。まず、申請者は高卒、或いは同等の教育を修了している者で小・中・高校での12年間の公認の教育課程を修了したことを証明できること、若しくは、少なくとも2年間の研修か実務経験を必要とする職業 (米国労働省の定める基準に準ずる) に過去5年以内に2年以上従事していることが条件となります。米国労働省の職業基準に関してはO*NET オンライン・データベース (http://www.onetonline.org/) で確認できます。さらに、申請者は犯罪暦の有無やテロ国支援国家の出身であるかなど、米国移民法の要件を満たしているか審査されます。

申請方法は、オンラインリンクdvlottery.state.govに行き、申請者の氏名、性別、生年月日、出生地、出生国、パスポート情報、デジタル写真、郵便住所、居住国、電話番号、イーメールアドレス、最終学歴、婚姻関係、配偶者情報、子供情報など基本的な個人情報を入力します。デジタルも写真も添付し、オンラインで提出します。提出がおわると、名前と固有の確認番号が明記されている確認画面が表示されます。抽選状況については、2020年5月5日から2021年9月30日まで国務省のサイトで確認することができます。また、ビザ手続きのインストラクションや面接日時もEntrant Status Check上で通知されます。もし当選していれば、当選確認画面にいき、永住権申請方法についての指示に従い、申請費用支払いや必要書類など準備にとりかかります。当選すれば、自分の番号の順番が回ってくるのを待ち、オンラインでDS260申請書類を作成し、必要書類を揃えて米国大使館か領事館にビザ面接にいきます。審査官は、本人の学歴、職歴、犯罪歴などを審査して、永住権の資格を満たしているか判断します。

永住権の資格条件を満たさない応募者の数も考慮して、当選者は申請枠よりもかなり多めに選ばれますので、当選しても必ずしも皆が皆申請を行なえるわけではありません。受領番号の若い順に申請を行ないますが、当選者は自分の順番がまわってくるまでは永住権の申請書類を提出できません。2021年の9月末までに申請の順番が回ってこなかった場合、もしくはその年の永住権発給枠が達成してしまったら、当選者の永住権申請の受付は終了します。したがって、当選したらすぐにケース番号を確認し、順番が回ってきたら速やかに申請を行うことが大切です。もし順番がまわってくる前に永住権受付が終了した場合、翌年度の抽選に再度申し込むこともできます。ただし、抽選による永住権を取消す法案もでているため、今後も抽選永住権が続行するか、政府の発表を見守る必要があります。申請の詳細については、必ずdvlottery.state.govのサイトで政府のインストラクションを確認してください。

永住権と公的扶助

2019年8月14日に国土安全保障省は、アメリカ政府の公的扶助受益者の入国・ビザ申請拒否事由に関する新たな規定を発表しました。アメリカの移民法は自給自足を原則としており、生活保護など公的扶助を受けることが主な移民目的とならないように政策をとっています。この新規定により、外国人はアメリカへの入国時やアメリカ国内で学生ビザ・就労ビザ・永住権などを申請する際に公的扶助対象であるかを審査されます。しかし、米国市民や亡命者・難民など対象外の外国人においては、公的扶助を受けている、或は将来公的扶助の可能性があるのを理由に罰則や阻害要因をもたらすものではありません。

従来は、永住権申請時に申請者が生活保護に主に頼っているかを審査されましたが、新規定では、米国市民以外の外国人が、36ヵ月間に合計で12ヵ月以上特定の公的扶助を受けたかを審査されます。例えば、1ヶ月の間に対象となる公的扶助を2種類受けた場合は、2ヶ月の受給とみなされます。今回の新規定で、移民申請拒否の対象となる公的扶助の範囲が広がり、連邦・州・地元政府による所得維持のための現金援助、補助的栄養支援プログラム、Section 8プログラムによる住宅補助金や賃貸補助金、特定のMedicaid受給者 (21歳未満や妊婦を除く)、Section 9プログラムによる公営住宅、などの補助プログラムが対象となります。

家族スポンサーによる永住権申請の場合、従来は扶養宣誓供述書を提出し、申請者の所得や資産情報を開示することにより、扶養家族を養う財的条件を備えていることを証明することができました。今回の規定では、扶養宣誓供述書だけでは将来のいかなる時点においても生活保護の対象にならないという保証はないとしており、永住権申請者は公的扶助の対象にならない証拠として、新たにI-944自給自足宣誓フォームの提出を義務付けられます。I-944には申請者の家族、収入、資産、負債、保険、教育、スキル、外国語、雇用などの情報を記入します。これら総合的情報をもとに、将来のいかなる時点においても公的扶助の対象にならないかを審査されます。また、永住権申請前の36カ月の間に合計12ヵ月以上対象となる公的扶助を受けていれば、財的条件を備えている証明が非常に難しくなります。新規定施行前の受給は対象となりません。ただし、新規定施行以前からすでに移民申請拒否の対象となる公的扶助を受けていた場合は、その受給期間も対象となります。

学生や就労ビザなどの非移民ビザ滞在資格の延長や変更申請の場合は、比較的簡素化された基準が適用されます。この場合、当該非移民ビザ滞在資格が開始してから、延長・変更を申請するまでの間の36カ月間の内合計で12ヵ月以上対象となる公的扶助を受けたかを審査されますが、将来のいかなる時点においても公的扶助を受ける可能性があるかという基準は適用されません。

各国の米国大使館や領事館を統括する国務省は既に永住権審査基準を厳しくしており、公的扶助要因があるかを慎重に審査しています。そのため、過去一年間のアメリカ国外からの永住権申請の却下率が上昇しています。2016会計年度には公的扶助を理由に永住権申請を却下された人は1,033人だったのに対し、2018年10月から今年の7月末までの間に同様に公的扶助を理由に永住権申請を却下された人はその10倍以上の12,179人にも上っています。特に、メキシコからの申請者が公的扶助の可能性を理由に却下が増えているようです。この新規定が施行されると、永住権申請の却下率がさらに高くなると予想されています。この新しい規定に対し訴訟や差止命令など施行時期を遅らせる措置がとられない限りは、予定通りに10月15日からこの新規定が適用されます。

永住権国別年間枠達成

2019年8月のVisa Bulletin (移民ビザ申請の待時間表) が発表されました。移民ビザは国によって年間申請枠が設けられています。申請者数が国別の年間割当発行枠を超えなければ、すぐに永住権を申請することができますが、国別の年間割当発行枠以上の申請がある場合は、その国の永住権申請には待ち時間が設けられます。移民局の申請年度は毎年10月に始まるので、9月の年度末が近づくにつれ、その年の年間発行枠の残りが少なくなってきます。今年は7月末でどの国も申請者数が国別の年間割当発行枠を超えたために、8月にはどの国も永住権申請に待ち時間ができました。

国務省のウエブサイトhttps://travel.state.gov のVisa Bulletinには、毎月永住権優先枠のPriority Dateが発表されます。永住権申請者数が国別の年間割当発行枠を超えなければ、永住権の申請に待ち時間がないために、Priority DateはCurrentとなり、“C” と表示されます。国別の年間割当発行枠以上の申請がある場合は、特定のPriority Dateが掲示されます。Priority Dateとは自分のLabor Certificationの申請受領日、或いは永住権のスポンサー申請 (I-130やI-140) の受領日を指します。移民局が発表したPriority Dateが自分のPriority Dateと同じ或は自分のPriority Dateを過ぎていれば、永住権申請の最終過程である永住権への滞在資格変更申請 (Form I-485) を提出することができます。

雇用主スポンサーによる永住権の申請には5つの申請枠があります。労働局のLabor Certification 過程が免除される第1優先枠に関しては、インドのPriority Dateは01/01/2015 (ほぼ4年半の待時間) と変更はないものの、その他の国は8月には2年程後退してPriority Dateは07/01/2016 (ほぼ3年待時間) と表示されています。修士業や博士号を必要とする職種、或いは高度な技能や知識を必要とする職種が該当する第2優先枠では、7月時点では待ち時間があったのはインドと中国だけでしたが、8月からはその他の国もPriority Dateが01/01/2017と表示されており、永住権申請までほぼ2.5年の待ち時間ができています。その他の職種用の第3優先枠も7月時点では待ち時間があったのはインドと中国だけでしたが、8月からはその他の国もPriority Dateが07/01/2016とでており、永住権申請までほぼ3年の待ち時間ができています。宗教関係者用の第4優先枠は、メキシコとエルサルバドル・グアテマラ・ホンドゥラス (Priority Dateはいずれも 07/01/2016) 以外の国には依然として待ち時間はありません。投資による永住権申請用の第5優先枠は、インド、中国、ベトナム (Priority Dateはいずれも 10/15/2014) 以外の国は、依然として待ち時間はありません。8月のVisa Bulletinには第1、2、3優先枠はすべての国にPriority Dateが表示されているので、雇用主スポンサーによるI-140が承認されても、8月からは自分のPriority Dateの順番がまわってくるまで永住権へのステータス変更申請 (I-485) を提出できなくなります。しかし、10月には新年度の新たな国別年間枠が発表されるので、オンラインで自分のPriority Dateの順番が回ってきたのを確認したら、速やかに永住権の申請を提出できるように準備をしたほうがよいでしょう。

雇用主スポンサーによる永住権申請の待ち時間が後退している反面、家族スポンサーによる永住権申請枠はさほど大きな違いは見られません。ただ、永住権保持者スポンサーによる配偶者と未成年の子供の永住権の申請枠 (F2A) はどの国籍保持者も今年の7月から待ち時間がなくなっています。そのため、アメリカ国内で有効な滞在資格を持っている人であれば、現時点では永住権保持者によるスポンサー申請 (I-130) と本人による永住権の申請 (I-485) が同時に申請できるようになりました。外国人配偶者が国外にいる人の場合は、永住権保持者によるスポンサー申請 (I-130) が移民局に承認されれば、すぐに自国の米国大使館や米国領事館で移民申請を行うことができます。家族ベースの永住権の申請も毎月Priority Dateが更新されているので、オンラインで自分のPriority Dateの順番が回ってきたのを確認したら、速やかに永住権の申請を提出できるように準備をしたほうがよいでしょう。

ビザ審査とソーシャル・メディア

2019年5月31日、米国国務省は移民ビザおよび非移民ビザ申請書類の質問にソーシャル・メディア情報の項目を追加しました。これは2017年3月にトランプ大統領が発表したビザ申請者の審査厳密化の方針に基づき、国家安全強化を図る目的としたものです。国務省は各国に所在する米国大使館や米国領事館でのビザ申請プロセスを強化するために、虚偽の申請や不当目的の渡米を見極めるようにビザ申請過程や書類を改善するように指示を受けたため、ビザ面接が以前よりも一層厳しさを増していますが、今回の追加質問により、ビザ申請者の個人情報がさらに厳しく審査される見込みです。

オンラインで提出するビザ申請書類DS160やDS260には、アメリカでのコンタクト情報、本人の渡航情報、家族情報、過去の住所などの質問がありますが、各国米国大使館や米国領事館は、これ以外にもかなり以前からフェースブックなどのソーシャル・メディアでビザ申請者の個人情報や職務情報などが申請内容と相違ないか、或いは不法な活動をしていないかなどを調べていました。また、イスラム圏のテロ対策として発表された大統領令13780が発令されてからは、ビザ面接後に米国大使館から追加情報として両親の氏名と生年月日、過去5年間の雇用主情報や住居情報、利用しているソーシャル・メディア情報を提供するように要請されるケースもみられるようになりました。

ビザ免除プログラムESTAは、イスラム圏のテロ対策を目的に、すでにFacebook、Twitter、Google+など旅行者が利用しているソーシャル・メディアのアカウント名を尋ねる制度を導入していますが、今回オンラインのビザフォームを改訂したことにより、政府関連ビザなど一部のビザ種類を除き、渡米者は皆ソーシャルネットワーキング情報の提供を義務付けられるようになりました。今回改訂された新しいビザ申請フォームには、過去5年間に使用したことのある電話番号、イーメールアドレス、ソーシャル・メディアの種類とアカウント名の質問が追加されています。これらの質問を追加することにより、申請者の身元確認プロセスが強化される見込みです。ソーシャル・メディアのリストには中国で利用されているものも多く含まれており、下記のメディアが挙げられています。 ASKfm、DOUBAN、Facebook、Flickr、Google、Instagram、LinkedIn、Myspace、Pinterest、Qzone (QQ)、Reddit、Sina Weibo、Tencent Weibo、Tumblr、Twitter、 Twoo、Vine、VKontakte (VK)、Youku、YouTube。これ以外のソーシャル・メディアを利用している場合も情報の開示を求められます。これら情報は、現米法においてビザ申請者がビザの条件を満たしているかを判断する目的に使われるもので、ビザ面接時にソーシャル・メディアのパスワードに関しては質問されません。ソーシャル・メディアを使ったことのない人は、“None”と回答することができます。ソーシャル・メディア名を提供しないという理由だけでビザ申請が却下されることはありませんが、虚偽の申請をしたとみなされた場合は問題視されます。審査の遅延を避けるためにも、質問には正直の回答する必要があります。

これらの措置は外国人に対するプライバシーの侵害であるとの批判もでていますが、アメリカ政府はアメリカに対する潜在的な脅威を認識し、テロリストや危険人物の入国を防ぐために必要な措置であるという見解をとっています。今後、ビザ面接時だけではなく、アメリカに入国する際にも入国官にソーシャル・メディアのアカウントについて聞かれる可能性もありますので、渡米者は自分の利用しているソーシャル・メディアに投稿しているコメントなどに問題がないか、自分のネットワークに問題視されるものはないかなど、事前に確認した方が無難でしょう。

留学生の不法滞在 新解釈に差止命令

2019年5月3日にノースカロライナの連邦地方裁判所は、2018年に移民局が発表した学生ビザ保持者の不法滞在に関する新しい解釈に対して、暫定的差止命令を下しました。

通常のビザ保持者は、I-94に書かれた滞在期間を超えて滞在するとオーバーステイとみなされます。オーバーステイが180日超えると3年間アメリカへの入国禁止となり、不法滞在が365日を超えると10年間アメリカへ入国禁止となります。ところが、F学生ビザ、 J交換訪問者ビザ、M職業学生などのビザ保持者のI-94とパスポートには特定の滞在期間ではなく、 “D/S”と記載されています。D/SとはDuration of Stayのことで、入学に必要なI-20やDS2019に書かれてある期間まで滞在が有効であるということです。今まで移民局は、これら学生ビザ保持者は、滞在期間を超えて滞在してもすぐにはオーバーステイ扱いにはならず、裁判所から退去命令が届いたり、或いは移民局が滞在資格を却下して初めてオーバーステイが始まるという解釈をしていました。ところが、2018年度の政府の新しい解釈により、F、J、M学生ビザ保持者もI-20やDS2019に書かれてある滞在期間を超えて滞在した場合はオーバーステイ扱いとなり、オーバーステイが180日或は一年を超えている場合、一旦国外に出ると3/10年入国禁止の対象となりました。

また、滞在期間を超えて滞在した場合以外にも、滞在資格に違反があった場合もその時点からオーバーステイがカウントされるようになりました。例えば、学校の授業に参加しなくなったり、就労許可なくして就労をしたり、或いはOPT期間を一日でも超えて仕事をしたりした場合なども、滞在資格違反としてオーバーステイのカウントが始まるようになりました。

これに対し、米国教員連盟と個人の原告二人が政府に対し、昨年度の移民局の法律に対する新しい解釈は、立法の手続きを踏まなかったこと、さらに、現法の移民国籍法に相反するという理由で、訴えを起こしました。これに対し、ノースカロライナの連邦地裁は、最終判決が出るまでの間は、政府の解釈の施行を一時的に差止めするように命令しました。この暫定的差止命令が有効な間は、学生のオーバーステイに関する法律に対する政府の新しい解釈は適用されません。恐らく6月くらいには最終判決が出るのではないかと思われますが、後に政府の解釈は妥当であると判断される可能性も秘めているため、この間国外への旅行は控えた方が無難だと思われます。ただ、個々の事情は異なるので、滞在資格の違反が考えられる場合は専門の弁護士に相談したほうがよいでしょう。