Eビザと出身国による差別
日本からの派遣社員に使われるビザにはEビザとLビザがあります。今回はこのEビザの申請方法、また差別クレームがついた際の特殊性について説明いたします。
Eビザとは米国と通商航海条約を締結している相手国にのみ適用される非移民ビザのことで、Lビザとは異なり、申請者は条約締結国の国籍保有者に限ります。Eビザの配偶者および21才未満の子供にも同伴家族としてEビザが発給されます。配偶者は就労許可を申請することができ、特別の制限なしに就労することができます。
EビザにはE-1(条約貿易ビザ)とE-2(条約投資家ビザ)の2種類があります。E-1貿易ビザを申請するには、まずアメリカにある会社の資本50% 以上が日本出資でなければなりません。さらに、日米間において相当量の貿易量があり、且つ、全世界の取引高の51%以上が日米間の取引であることが条件です。
E-2投資家ビザはE-1ビザ同様、アメリカにある会社の資本50% 以上が日本出資でなければなりません。ただし、個人投資家の場合、米国の永住権を取得した時点で、E-2投資家としての資格を失うので注意が必要です。このビザは米国内に投資をし、アメリカ人に会社運営に不可欠な技術を教育・訓練する為に赴任する日本人に認められるビザです。また、投資内容は積極的に事業経営を行うものでなければならないため、事業経営を伴わない単なる資金投資や、消極的な不動産投資などはE-2の投資としては認められません。新規事業投資の場合、事業計画を裏付けるために、ビザ申請時に事業計画、設備投資計画、従業員雇用計画、収益予想などの資料を提出することが重要です。投資額に規定はありませんが、業種や地域などによって異なるため、専門家に相談したほうがよいでしょう。
Eビザは、役員・管理職もしくは特殊技能・知識保有者に適用されるため、関連職務経験のない新卒者に使われることはめったにありません。また、Eビザの申請者はH-1Bとは異なり、学歴の他に職歴を重点的に審査されますが、EビザはLビザとはことなり、必ずしも関連会社での職務経験を条件とはしていません。雇用主、関連会社、もしくはその他の企業で関連職務経験が最低1年はあった方が無難でしょう。
Eビザの申請方法には2通りあり、日本の米国大使館や領事館で直接Eビザスタンプを申請する方法と、米国移民局にEビザへの滞在資格(I-94)変更を申請する方法があります。日本の米国大使館もしくは領事館でEビザを申請する場合は、5年間有効なビザが発行されます。会社が存続し、利益をあげている限り、ビザの延長回数には制限はありません。ビザが有効な間は米国に数次入国することができ、入国時には毎回2年間有効な滞在資格を記したI-94カードを渡されます。滞在資格を延長するには、I-94カードの有効期限が切れる前に一旦国外にでて再度米国に入国し、入国時に新たなI-94を取得するか、または、米国内にて移民局に滞在資格の延長申請を行うことができます。
すでに米国国内で有効なビザで滞在している人は、米国内でEビザに滞在資格を変更することもできます。この場合、米国移民局に2年間のEビザ滞在資格を申請します。また、移民局に特急料金を支払えば、申請書類に問題がなければ、15日以内に審査を終了することができます。追加証拠の要請がくれば、証拠を提出してから、さらに15日以内に審査がされます。ビザウエイバーで入国した人は、特定の例外を除いては、米国内で滞在資格を変更できません。
米国でEビザ滞在資格を申請した場合、新しい滞在資格を取得します。つまり承認通知書にE-1/E-2と書かれたI-94カードがついてきますが、ビザスタンプは発行されません。したがって、国外に出る場合、出国時にI-94カードを提出してしまうため、米国に再入国するためには在日米国大使館か米国領事館でEビザスタンプの申請を行わなければなりません。ところが、EビザはLビザやH-1Bとは異なり、在日米国大使館・領事館は、米国移民局が発行したEビザ滞在資格の承認通知書(Approval Notice)を受け付けません。在日米国大使館や領事館は独自の審査基準に基づいて、Eビザの資格を新たに審査します。従って、米国移民局がEビザ滞在資格を承認しても、在日米国大使館や領事館もEビザを承認するといった保証はありません。
さて、今回の不況のあおりで事業閉鎖や人員削減、さらに就労時間の削減など各地であいついでいますが、日本人以外の社員だけを対象に特別な措置をとった場合、公民権法第7章の出身国による違法差別行為であるといったクレームがつくことがあります。公民権法第7章の対象となるのは社員を15名以上雇用している企業です。ところが、米国子会社の人事政策や事業経営など重要な決定事項に対しすべて日本の親会社からの指示が出ている場合、たとえ米国子会社が15人以下であっても、日本の親会社が公民権法第7章上の雇用主とみなされることもあるので注意が必要です。ただし、日米間の友好通商航海条約の条約国の企業には、役員・管理職や特殊技能・知識保有者の雇用に際し、自国民優先の権利が与えられているため、裁判地区によっては、日本人だけを優遇しても出身国による差別クレームが当てはまらないこともあります。自国民優先の必要性を証明するためには、Eビザの駐在員がアメリカ人ではできないような日系企業特有な高度な知識を必要とする業務を遂行していることを証明しなくてはなりません。しかしながら、出身国差別訴訟の判決文には、管轄裁判地区によって解釈にかなりの差があるため、雇用主は会社所在地管轄の裁判判決を把握し、出身国による差別のクレームに対し、社内で確固たる防御体制を築いているか確認する必要があるでしょう。
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