人員削減とビザ、滞在資格の維持
Thursday, January 22nd, 2009今回の世界的不況で、倒産もしくは大量解雇が世界的規模で相次いでいる。そこで、解雇にかかわる雇用法上の問題および非移民滞在資格の留意点を以下に説明する。
日本では従来は終身雇用制が定着していたが、米国ではほとんどの州で任意の雇用 (Employment At Will) が原則である。これらの州では、雇用主は法律に触れない範囲で、社員をいつでもいかなる理由でも解雇することができる。ところが、雇用主が差別行為を意識していなくても、人種、性、出身国、宗教など公民権法第7章にかかわる差別的解雇と、被解雇者から不当解雇のクレームがつくことがある。さらに、米国には日本のような定年退職制度がないため、賃金の高い高齢者だけを解雇すると年齢による差別的行為とみなされる可能性もある。セクハラなど社内での違法行為を告発した者を解雇した場合、もしくは、組合活動参加など法律上被雇用者に与えられた権利の行使を理由に解雇した場合、違法な報復措置とみなされる。
個別の雇用契約が存在する場合は解雇が契約違反にならないか、雇用契約が存在しない場合でも雇用を保証するような発言や記載がないかを確認する必要がある。また、組織労働者の場合は労働協約に違反しないよう、専門家の意見を求めること。従業員が100人以上いる企業が企業閉鎖もしくは大量解雇する場合は、WARN (Worker Adjustment and Retraining Notification Act ) 法により従業員に60日前の通告を義務付けられる。州によってはさらに規制を設けているところもあるので注意が必要。その他、解雇手当や会社を起訴しなという権利放棄書(Release of claims)が必要かどうか、専門家の意見を求めることが重要である。
これら差別行為や違法行為が存在しないことを証明するために、雇用主は社内規則やルールを見直し、問題処理の相談窓口を設け、職責と賃金レベルを明確にし、社員を平等に取扱うよう心がけることが大切である。また、日ごろから従業員の評価記録(怠慢、成績不良、無断欠勤)を随時更新し、また差別発言がないように管理職教育などを行うなど、雇用主は確固たる防御体制を築くことが重要である。
次に、就労ビザや学生ビザ保持者を解雇する際の留意点をあげる。F-1の学生は卒業後OPT(Optional Practical Training)の就労資格で12ヶ月間就労することができるが、 STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics) 専攻の学生 はOPTをさらに 17ヶ月間延長することができる。STEM学生を17ヶ月の延長期間中に解雇する場合、雇用主は学生の解雇や帰国を大学のInternational Students Officeに報告する義務がある。
J-1企業研修を途中で中止する場合は、その旨をJ-1スポンサーに報告する。F-1保持者とJ-1保持者の滞在資格は移民局のSEVISシステムに管理されているため、学校やスポンサーは雇用・研修・解雇情報をシステムに記録する。
H-1B保持者を承認期限前に解雇する場合は、雇用主は本人が本国に帰国する渡航費用を負担する義務がある。移民局への解雇通知を行わないと雇用主責任が続行するため、将来再度H-1Bで雇用する予定がない場合は、すみやかに移民局に通知を行ったほうが無難である。また、H-1Bには平均賃金遵守の規定があるため、労働局にも労働条件申請書 (LCA=Labor Condition Application) の取下げ通知を行う必要がある。これを怠ると雇用主の賃金支払い義務が続行するため、訴訟問題などがおきた場合には、解雇後もLCA有効期間中の未払賃金としてバックペイの支払いを命じられることもある。
給与や就労時間の削減を行う場合、H-1B社員に関しては平均賃金違反にならないよう注意する必要がある。給与を削減する場合は平均賃金を下回らないよう注意しなければならない。また、勤務時間を削減する場合は、H-1Bをフルタイムからパートライムに変更するために訂正申請書を移民局に提出しなければならない。
さて、解雇された後の滞在資格について説明する。F-1学生はOPT期間中であれば、転職は自由にできる。就職・退職などの雇用情報はその都度International Students Officeに報告する。12ヶ月間のOPT期間中に合計90日以上(STEM学生の場合29ヶ月の OPT期間中に合計120日以上)非雇用状態が続くと、OPTは無効となってしまうので注意が必要。OPT終了から60日以内にF-1の滞在資格(I-20)を更新するか、もしくはその他のビザ滞在資格へ変更申請をすれば、米国での滞在資格を保つことができる。ただし、ビザの種類によっては移民局の方針が随時変更する可能性があるため、専門家に相談すること。
J-1企業研修生は、研修終了後に30日の猶予期間があたえられるため、それまでにその他のビザ滞在資格に変更申請を行うことができる。研修が途中で中止になった場合は、その翌日から滞在資格を失う。研修が中止する前にほかのビザ滞在資格に変更申請をすれば、米国での滞在資格を保つことができる。
H-1B保持者は承認期間を完了すれば10日間の猶予期間があたえられるが、H-1B雇用が途中で終了した場合は、翌日から滞在資格を失う。ただし、H-1Bに限ってPortability の適用があるため、H-1B雇用関係が終了する前に、次の雇用主のH-1B申請を移民局に提出すれば、承認を待たず翌日から新雇用主のもとで就労を開始することができる。解雇されてから次の就職先が見つかるまで間があいた場合は、H-1Bは米国内での滞在資格の変更ではなく、海外でのビザ申請(Consular Processing)として申請する。この場合、H-1Bが承認されたら、海外の米国大使館でビザ申請を行い、再入国することになる。
オーバーステイが180日を越えると、3年間は米国に入国禁止となる。これが365日を超えると、米国には10年間は入国禁止となるので注意が必要。オーバーステイをすると、ほとんどの場合米国内にて滞在資格の変更申請を行うことはできないが、オーバーステイが180日を越えなければ、海外でビザを申請して再入国することは可能である。ただし、近年オーバーステイへの見方が厳しくなっているため、滞在資格を失う前に速やかに国外に出るのが無難である。滞在中に滞在資格に違反がなければ、その後はビザウエイバーや観光ビザで入国し、就職がみつかれば、再度就労ビザを申請して入国することも可能である。
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