2016年4月: 移民法改正大統領令裁判

2016年4月18日に米国連邦最高裁は、現在一時的に施行を差止されている移民法改正に関する大統領令の一部の合法性に関し、テキサス州を初めとする26州と米国連邦政府の間で口頭弁論が展開された。問題となっているのは、2014年11月に発表された大統領令で、現行の不法滞在者に与えられている救済措置(DACA)の適用範囲を拡張し、より多くの不法移民に対して救済措置をとるという新DACA措置である。この大統領令により、米国に5年以上滞在している犯罪歴のない者で、子供の時に不法入国した者は短期的な滞在資格を認められる。2012年のDACA案では、2007年以前に16歳未満の時に米国に不法入国した者が対象であったが、今回の大統領令では対象者の範囲が拡大され、2010年までに入国した者が含まれる。さらに、家族の離散を極力防ぐために米国市民権や永住権保持者の親(DAPA)にも救済措置を与える。これにより米国内に滞在するおよそ1100万もの不法移民のおよそ半数が救済措置の対象になるとみられていた。ところが、発令翌月には保守的な南部州を中心に26州が、オバマ大統領の発令は越権であるとして南部テキサス州の連邦地裁に提訴した。その結果、2月18日から開始する予定であった新DACAとDAPAの申し込み受け付けが一時的に差し止められることになった。

これに対し、連邦政府は連邦最高裁に上訴し、今回の口頭弁論に至った。連邦政府側はテキサス州政府には当事者としての適正資格(standing)を満たしていないと訴えているのに対し、テキサス州政府側は大統領にはこのような法律を独自に決定する権限がないと反論している。テキサス州政府はより多くの不法移民に運転免許を与えることで州政府の経済的負担が増大するので、当事者として利害関係があると主張しているが、就労許可証の発行によりこれら不法移民がもたらす税収入やその他経済効果については触れていない。

大統領の権限については、ケネディー判事はオバマ政権の今回の方針は越権であるとコメントしているが、退去処分対象者の優先順位を決めるのは、今までの歴史からみても連邦政府の裁量内であるとテキサス州側も認めている。つまり、公共・国家・国境の安全を重視し、重犯罪者の退去を優先するという方針を打ち出すこと自体に意義をとなえているわけではない。しかし、米国に対して無害な犯罪歴のない不法移民よりも重大犯罪者の退去を優先すべきというオバマ政権の方針に対し、不法移民の退去を優先視しないことで州政府の財政負担が増加するような方針を施行すべきでないとテキサス州政府側は主張している。それに対しソトマイヤ判事は、好むと好まざるとにかかわらず、11ミリオンもの不法移民の存在自体が重度の経済的影響力をもっていることは否めないとコメントしている。今回のテキサス州の主張を容認してしまえば、今後、連邦政府がその権限内にて方針を打ち出すたびに、各州政府が”同意できない”という理由で、ありとあらゆる方針に対して訴訟問題が持ち上がる可能性がでてくる。その都度、訴訟には多大の税金を使うことになってしまう。

保守派のスカリア判事が逝去したことで、9人目の判事が任命されるまで連邦最高裁8人の判事は保守派とリベラル派の半々に分かれる可能性がある。法廷内でもDACAに対する見解が分かれているようにみうけられるが、6月に発表される裁判判決が5万人もの人々の人生を左右することになるであろう。

 

執筆:大蔵昌枝弁護士, フィッシャー・ブロイルズ法律事務所

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2016年3月: 理数系(STEM)学生のOPT期間延長

アメリカで大学を卒業した人であれば、卒業後は通常プラクティカル・トレーニングという研修資格で就労をすることができます。プラクティカル・トレーニングにはCurricular Practical Training (“CPT”) とOptional Practical Training (“OPT”) の2種類がありますが、これらは学位取得を目的とする学校にフルタイムで9ヶ月以上在籍した学生が申請できる就労許可です。

CPTとは、大学の授業の一環として単位取得を目的とする就労、もしくは就労経験が学位取得のために必要な経験であると認められた場合に申請することができるものです。CPTで就労するには、事前に大学の所属学部とインターナショナル・オフィスのDesignated School Official (“DSO”) の許可を得る必要があります。CPTはパートタイムでもフルタイムでも申請できます。CPTをフルタイムで12ヶ月間以上利用した場合、OPTの申請資格を失うので注意が必要です。

OPTとは、学生が大学の専攻分野で実践的経験を積むことを目的に与えられる就労許可証です。OPT を利用すると一回に複数企業に勤めることもできますが、勤め先が変わる都度に学校のインターナショナル・オフィスに報告しなければなりません。卒業前の90日前から卒業後の60日までの間にOPTを申請することができます。最長期間は12ヶ月ですが、卒業前にもOPTを申請することもできます。例えば、学期中は週20時間までOPTで働くことができます。夏休み・冬休みなどは週40時間まで働くことができます。ただし、卒業後は、卒業前に使ったOPTの期間を差し引いた残りの日数分だけのOPTしか申請することができません。OPTは学位毎に申請することができるので、学士レベルで申請した後、修士号、博士号を取得する度に新規にOPTを申請することができます。

卒業後も引き続き米国に滞在するには、OPT終了後の60日の猶予期間(グレイスピリオド)が切れる前に、F-1滞在資格(I-20)を延長する、もしくは観光や就労ビザを申請するなど、何らかの滞在資格を維持する必要があります。OPT中に大卒者が利用する主な就労ビザにはH-1Bビザ(専門職)が挙げられます。H-1Bには85,000の年間枠(内2万件はアメリカの修士号以上取得者用)があり、ここ数年は年間枠を大幅に上回る申請者がいたために、申請受付開始の4月1日から5営業日で申請受付は締め切られています。申請者は無作為の抽選にかけられ、当選したもののみが、審査されています。当選確率は年々下がっており、今年は一昨年度の50%、昨年度の30%をさらに下回ると予想されています。

H-1Bの抽選に当選した人は、H-1Bの申請中にOPTが失効しても、H-1Bの開始日である10月1日までOPTの期限を延長することができます。これはOPTのキャップ・ギャップ・エクステンションという措置で、移民局に申請書類を提出する必要はありませんが、H-1Bの受領通知書を学校のインターナショナル・アドバイザーに提示し、I-20にH-1Bの自動延長の旨を記載してもらいます。自動的に延長された期間は、H-1Bが却下、拒否、もしくは取り消された時点で終了します。

この他にもScience, Technology, Engineering, Mathematics (STEM) など理数系専攻の学生であれば、OPT期間をさらに17ヶ月間延長できます。したがって、本年度H-1Bの抽選に当選しなかったSTEM学生は、来年度もH-1Bを申請できるというわけです。17ヶ月の延長を申請する条件として(1)STEM分野で学士、修士、博士の学位を取得済みであること、(2)OPT就労資格で米国雇用主のもとで専門分野と関連した職務に従事していること、(3)雇用主はE-Verify 雇用資格確認システムに登録していることです。また、雇用主は学生の解雇や帰国を大学のインターナショナル・オフィスに報告する義務があります。

尚、3月にはSTEM学生のOPT延長に関する法律に変更があり、本年度5月からはSTEM学生のOPTの延長期間が17ヶ月から24ヶ月に伸びます。新しい法律では、STEMの追加延長を申請できるのは米国教育省の認可をうけ、かつ、学生・交換訪問者プログラムに承認された学校に限定されます。また、雇用主はSTEM-OPT期間の学習目的を明確にし、正式な研修プログラムを作成しなければなりません。研修計画に変更が生じた場合は、変更点について報告をしなければなりません。さらに、米国社員の雇用を守るために、STEM-OPT学生の雇用が米国社員の職を奪うものであってはならず、また、STEM-OPT学生の待遇は、同職の米国社員より劣るものであってはなりません。STEM-OPT期間は最低でも週20時間は勤務する必要があります。

注意すべき点は、最初の12ヶ月のOPT期間中に雇用が90日以上中断すればOPTが失効してしまうことです。また、追加24ヶ月のSTEM-OPT期間は60日以上(つまりOPT全36ヶ月間に合計で150日以上)雇用が中断すれば、OPTが失効してしまいます。したがって、OPTが失効しないように、雇用中断期間が規定日数を超えないように心がけることが大切でしょう。

執筆:大蔵昌枝弁護士, フィッシャー・ブロイルズ法律事務所

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2016年2月: H-1B専門職ビザ申請受付

2016年4月1日にH-1B専門職ビザ申請の受付が始まります。H-1Bとは専門的知識を有する大卒以上の学位取得者を対象とした短期就労ビザの一種で、毎年H-1Bの就労開始日(10月1日)の6ヶ月前の4月1日に申請受付が始まります。

H-1B年間枠.H-1Bは年間枠が65,000枠ありますが、これとは別に修士号や博士号取得者にはさらに20,000枠設けられています。この中から6,800枠はチリとシンガポール国籍者に割り当てられます。ここ数年間H-1Bの申請者は年間枠を大幅に上回っているため、申請受付は4月の初週で締め切られ、無作為の抽選で選ばれた申請者のみ審査されています。一昨年は年間枠の2倍もの申請があり当選確率はおよそ50%、昨年度は3倍以上の申請があり当選確率はおよそ30%と年々低くなっています。今年も例年よりもさらに多くの申請が殺到すると予想され、米国議会が年間枠を増やさない限りは、今年の当選確率は昨年度をさらに下回るのではないかと予想されています。今年も昨年同様、申請受付が4月初週の5日間のみであると予想されますので、早めに申請準備を始めたほうがよいでしょう。ただし、過去6年間にすでにH-1Bを取得したものであれば、H-1Bの延長申請や雇用主申請は年間枠の対象とはなりません。

H-1B枠免除団体.雇用主が非営利団体の大学機関、大学機関と連携プログラムがある非営利機関(たとえば、大学からインターン生をうけいれている病院など)、もしくは政府や民間の非営利のリサーチ団体などであれば、H-1Bの年間枠の制限をうけないため、4月1日の申請時期を待たずに、年中いつでもH-1Bを申請することができます。

H-1Bの申請条件.H-1Bビザは基本的には4大卒者(もしくは同等の資格をもつもの)を対象としていますが、大学の専攻科目がポジション内容と一致していることが条件です。ただ、近年米国移民局の審査が大変厳しくなっているため、理数系以外は審査はかなり難航することが予想されます。

H-1B遵守事項.H-1B 雇用主はその地域の平均賃金もしくは同職社員に支払う賃金のいずれかの高い方をH-1B 社員に支払う義務があります。H-1Bはフルタイムでもパートタイムでも申請できますが、フルタイムの場合は最低でも年間平均賃金、パートタイムの場合は平均時給を支払う義務があります。また、H-1B 雇用主はH-1B申請前にH-1B の雇用条件(職務、賃金、勤務場所、勤務期間などの情報)を社内2箇所に10営業日間掲示する必要があります。その他にもH-1B 雇用主はH-1B期限満了前に会社の都合でH-1B 社員を解雇した場合、その社員が自国へもどるための渡航費用をオファーする義務があります。さらに勤務地が複数にわたる場合、それぞれの地域の平均賃金を遵守する必要がありますので、注意が必要です。なお、雇用主はH-1B社員の給与や雇用条件に関し、政府役人や社員などから閲覧を求められたらすぐに開示できるように、これら情報をPublic Access File に保管する義務があります。

複数企業・転職 H-1Bはスポンサー企業での就労に限定されていることから、転職を希望する場合、新しい雇用先が新たにH-1Bの申請手続きを行わなくてはなりません。また、H-1Bはパートタイム申請も可能なため、雇用主が複数いる場合は、それぞれの雇用主がH-1Bを申請することで、複数企業で同時に就労することもできます。また、H-1B枠免除団体を通してH-1Bを取得していれば、H-1B枠免除団体での雇用が続く限りは、H-1B枠対象企業が2つ目のH-1Bを同時雇用として申請することもできます。ただし、この場合H-1B枠免除団体での雇用が終了した時点で、2つ目のH-1Bも無効となってしまいます。なお、H-1B枠免除団体からH-1B枠対象企業へ転職するときは、新たにH-1Bの年間枠の対象となりますので、注意が必要です。

申請料金.H-1Bの初回申請費用は、基本申請料金$325、詐欺防止費用$500(初回申請のみ), ACWIA追加申請料金 $1500(社員25名以下の場合は$750)の3通りの費用がかかります。H-1B枠免除の対象となる非営利団体はACWIA追加申請料金が免除されます。また、2015年12月の米国議会一括予算法案により、50名以上の社員をかかえる企業で、50%以上の社員がH-1Bであれば、従来の申請費用に加え、さらに$4,000の追加申請費用が課せられるようになりました。

H-1B開始日.無事にH-1Bが承認されたら、同年の10月からの就労開始となります。米国内で学生ビザを持っている人であれば、卒業後12ヶ月の就労許可証(OPT)をもらえるため、H-1Bの開始日まではその就労許可証で就労を続けることができます。尚、H-1Bを申請した後にOPTが失効する場合、H-1Bの受領通知書を大学のインターナショナルオフィスに提示すれば、10月のH-1B就労開始日までOPT期間を延長してもらうことができます。ただし、H-1Bが却下された場合は、この間延長されたOPTも無効となります。理数系のSTEM学位専攻の学生であれば、OPTをさらに17ヶ月延長することもできますが、そのためには雇用主がE Verifyに加入していることが条件となります。

最長期限.H-1Bの最長期限は6年で、毎回最長3年まで申請することができます。H-1Bの6年目以降も引き続き米国で就労するには、申請回数に制限のないEビザに変更するか、もしくは永住権を申請する方法があります。H-1Bの有効期間中に永住権(グリーンカード)の申請を開始し、既に1年間が経過していれば、永住権の順番待ちの間、6年目以降も引き続きH-1B滞在資格の延長申請を行うことができます。

執筆:大蔵昌枝弁護士, フィッシャー・ブロイルズ法律事務所

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2016年1月: 永住権の新しい申請手順

雇用主スポンサーや家族スポンサーによる永住権の申請にはそれぞれ年間発行枠が設けられており、申請するカテゴリーや申請者の国籍によって待ち時間が異なってきます。毎年10月に新しく発行枠が設けられ、この発行枠を使い切った時点でその年度の申請受付はおわります。昨年9月に10月からの新しい待ち時間が発表されましたが、ほとんどの枠の待ち時間に変更はなかったものの、中には大幅に後退した国もあります。例えば、F1枠、つまり、米国市民による未婚の子供の永住権スポンサー申請に関しては、メキシコ国籍者の優先日が10年ほど後退し、待ち時間が12年以上になりました。また、雇用スポンサー申請では、フィリピン国籍保持者の第3優先枠の優先日が5年ほど後退し、待ち時間が8年以上になりました。インド国籍保有者は2年ほど後退し、待ち時間が6年半以上に延びました。

昨年10月からの待ち時間発表とともに、新しい申請方法も発表されました。今までは、国務省のウエブサイトのVisa Bulletinにそれぞれの申請枠の優先日、つまりPriority Date(“PD”)が発表され、自分の優先日がきたら、永住権申請を提出することができました。Priority DateとはLabor CertificationもしくはI-140/I-130を申請した日のいずれか早い日をさします。ところが、今回の改正でPriority Date がFiling Date とFinal Action Date の2種類に分かれました。Final Action Dateとは従来の申請書類を提出できる日を指し、また永住権申請中にPriority Dateが後退して順番を待っている人であれば永住権を承認してよい日を指します。一方、新しく設けられたFiling Dateとは、自分の審査の順番が回ってくる前に、永住権の申請書類を提出してもよい日を指します。従来の方法だと、待ち時間が長いために米国内での滞在資格が失効して仕事が中断したり、一旦国外にでなければならなくなる申請者もいました。今回の改正措置により、米国内で審査の順番を待っている申請者もより早く永住権の申請書類を提出できるようになったため、順番待ちの間も合法滞在資格を維持・確保できる可能性が高くなり、またこの間も就労許可証や旅行許可証を使って仕事を続け、国外への旅行もできるようになりました。

家族スポンサーによる永住権申請に関しては、2016年2月のVisa Bulletinでは、永住権保持者が配偶者や子供(21歳未満)の永住権を申請する場合、Final Action Dateまでは1年半ほどの待ち時間がありますが、その日を待たずに、およそ9ヶ月ほど早めのFiling Dateに申請書類を提出できるようになりました。

雇用主スポンサーによる永住権では、卓越した研究者、科学者、芸術家、また日本の関連会社から派遣された上級管理職が使う第1優先枠には、2016年2月時点ではいずれの国籍にも待ち時間がありません。科学・教育・ビジネス分野で有能な能力をもつ外国人や大学院以上の学位保持者、もしくは米国に有益な貢献をするもの(National Interest Waiver)に該当する第2優先枠には、中国とインド国籍保持者以外には、永住権申請に待ち時間はありません。プロフェッショナル職(一般に大卒)や 熟練・非熟練労働者のいずれかに該当する第3優先での申請の場合は、日本国籍保持者であればFinal Action Dateまでの待ち時間は4ヶ月ほどあるものの、Filing Date までの待ち時間は1ヶ月をきっています。ただ、現時点ではLabor Certificationの審査時間が6ヶ月以上かかっており、この間にすでに順番はまわってくることになるので、待ち時間は実質ゼロです。同じ第3優先枠でも、中国籍保持者は審査までの待ち時間が3年4ヶ月ほど、フィリピン国籍保持者で8年以上、インド国籍保持者で11年半以上ありますが、それぞれ1年ほど早いFiling Dateに申請書類を提出できるようになりました。現時点において 永住権の申請(I-485)自体は比較的早く4ヶ月ほどで審査されているようです。審査が早く終わった場合、Final Action Dateをまってからグリーンカードが発行されます。

永住権の待ち時間は随時変更しているので、国務省のウエブサイトhttp://travel.state.govのvisa bulletinのPriority Dateを随時確認し、Filing Dateの優先日がきたら速やかに書類を提出する準備をしたほうがよいでしょう。

執筆:大蔵昌枝弁護士, フィッシャー・ブロイルズ法律事務所
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2015年12月: 米国一括予算法案に含まれる移民法改正点

米国議会は12月15日に一括予算法案を発表しました。今回の法案の中には移民法の改正に関する情報も含まれています。当初の提案の中でも、難民援助プログラムの終了や予算カット、特定犯罪歴・テロ容疑・不法入国歴のあるものの強制的拘留、また未成年で不法入国したものに短期就労許可証を与える措置(DACA)の撤廃など、外国人に対する排他的な案は最終法案から取り除かれました。しかしながら、H1B、Lビザ、ビザ免除プログラムに関する変更点は採択されました。

2010年8月に成立した緊急法案Public Law 111-230により、メキシコとの国境間警備強化に総額6億ドルの資金が当てられることになりました。この緊急法案は50名以上の社員をかかえる企業で、50%以上の社員がH-1BもしくはL-1ビザ保持者である場合に適用されます。この条件を満たせば、元来の申請費用の他に、H-1Bはさらに$2,000、L-1A/L-1Bはさらに$2,250の追加申請費用が課せられるようになりました。したがってH-1Bの場合は、政府への申請料金が従来の$2,325 (基本申請料金$325、詐欺防止費用$500, ACWIA追加申請料金 $1500)に追加料金を足すと申請料が$4,325になり、L-1A/L-1Bの場合は、従来の政府への申請料金$825 (基本申請料金$325、詐欺防止費用$500)に追加料金を足すと$3,075になりました。ただ、この緊急法案は4年間の期限つきで、2014年9月30日で終了しました。ところが今回の一括予算法案で、この追加料金が復活し、さらに追加料金がH1Bは$2,000から$4,000、Lビザは$2,250から$4,500に値上がりになりました。したがって、この法案に該当する企業はH1Bの申請料金が$6,325、Lビザの申請料金が$5,325となります。この追加料金は初回申請と延長時に課せられ、2025年9月30日まで10年間有効となります。この法案に影響される企業として、専門技術をもつIT技術者などをH-1Bで数多く受け入れているコンピューター企業やL-1駐在員を数多くうけいれている企業が考えられます。

ビザ免除プログラムは特定国を対象としており、参加国の国籍保持者が短期商用や観光目的で渡米する場合、有効な往復旅券を保持していれば、オンラインの電子渡航認証システム(ESTA)に登録することにより、ビザなしで米国に90日まで滞在することができます。現時点で38カ国ほどこのプログラムに参加していますが、今回の一括予算法案により、ビザ免除プログラムの国籍保有者であっても、同時にシリア、イラク、イラン、スーダンなど4カ国のテロ関連国の国籍を二重に保有している者は、仮にこれらの国に一度も訪問したこともない人であっても、これらの国の国籍を保持しているという理由だけで、自動的にビザ免除プログラムの資格を失います。また、2011年3月1日以降これらの国を訪問した者も自動的にビザ免除プログラムの資格を抹消されることになりました。したがって、資格抹消対象者にはジャーナリスト、学者、難民支援者、人道援助団体、人権調査団体など、テロ関連国の援助、調査、報道のために訪問したものも数多く含まれることになります。国家安全を強化する半面、特定国出身者に対する合法的根拠のない差別的行為にならないよう、人権擁護団体などは、ビザ免除プログラムの資格抹消対象者の中でも専門職業従事者などに対して例外を設ける、もしくはこの法案適用期間を短くするように働きかけていますが、今後もこの法案の合法性が問われることになるでしょう。

執筆:大蔵昌枝弁護士, フィッシャー・ブロイルズ法律事務所
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2015年11月: 児童性的犯罪者のビザ問題

2006年7月に前ブッシュ大統領によりアダム・ワルシュ児童保護安全法が成立しました。この法律は子供たちを性的犯罪、虐待、またインターネットをつかった児童ポルノから守る目的でつくられたものです。ところが、この法律により児童に対して特定犯罪の有罪判決を受けた米国市民もしくは永住権保持者は、家族の永住権のスポンサーをすることを禁じられました。唯一の例外として、申請者がその家族に対して危険を加える可能性が全くありえないことを証明できた場合においてのみ、米国国土安全保障庁の裁量に応じて、家族の永住権のスポンサーを認めています。

米国の証拠立証基準には(1)証拠の優位性(preponderance of evidence), (2)明白かつ確信を抱くに足る証明(clear and convincing evidence), (3)合理的疑いの余地のない証明(beyond reasonable doubt)の3つの基準があります。合理的疑いの余地のない証拠基準とは、通常殺人など重犯罪に対する証拠基準で、少しでも合理的疑いがあれば、有罪にはなりません。つまり、無実の人をあやまって有罪にするよりは、犯罪者を無罪にしたほうが無難であるという考えに基づいたものです。一方、契約違反など民事案件などでは、一般に3つの証拠基準の中では一番証明基準が低い証拠の優位性が適用されます。証拠の優位性とは、双方の提示した証拠を比べて、more likely than not、つまり五割を超える程度で、そうである可能性のほうがそうでない可能性より高いかを判断します。また、同じ民事でも、詐欺や重度障害事件などよりシリアスな案件であれば、明確かつ確信するに足る証拠基準が適用されることもあります。これは証拠の優位性よりは高く、合理的疑いの余地のない証拠基準よりは低い基準です。

移民法に関しては、移民ビザや非移民短期滞在型ビザの審査は、一般に証拠の優位性基準が適用されます。ところが、現法においては、児童に対する性的犯罪の有罪判決を受けた人が家族の永住権をスポンサー申請する場合、証拠基準の中で一番厳しい合理的疑いの余地のない基準が適用されてしまいます。

現在移民法上この法律が問題視されているのは、“申請者がその家族に対して危険を加える可能性が全くありえない”とは何を意味しているのか明確にされていないことです。この法律はもともと児童保護のために作られた法律ではあるものの、すでに刑期、罰則を全うし、更生して社会復帰したものが配偶者のビザをスポンサーすることさえできなくなっています。永住権対象者が子供ではなく配偶者であった場合、配偶者に対する性的行為を“家族に対する危険性”とみなすのか、移民局は未だにその審査基準を明らかにしていません。また、家族に危害をあたえる可能性が全くありえないことを証明するために医師から意見書を取得することも条件となっていますが、医師が、本人と配偶者とのカウンセリングの結果、家族に危害を加える可能性はみられないという意見を出しても、そのような可能性は“全くありえない”と100%断定していないという理由で、証拠の基準を全うしていないと判断されているのが現状です。

この法律の移民法への適用により、米国憲法で守られている個人の結婚の自由の権利が侵害されていると、“配偶者に対する危険性”とは何をさすのか明確でないこと、また一番厳しい証拠基準の移民法に適用されていること、法律施行以前の行為に対して遡及適用されているなどを理由に、近年訴訟が続いていますが、未だ肝心な点に関しては明確な回答は出されていません。現状問題として、一旦永住権を却下された配偶者は観光目的で米国に入国することが大変難しくなります。また、犯罪歴があるものの入国を禁止している国が多くあります。そのために、議会がこの問題をとりあげて法律を改善する、もしくは今後の訴訟で配偶者に対する審査基準が緩和されない限り、この間、国をまたいで離れ離れになっている夫婦が多くいるのが現状です。

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2015年10月: DV-2017 抽選による永住権

2017年度の永住権抽選(DV-2017)の受付が東部時間2015年10月1日正午12時にはじまり、2015年11月3日正午に終了します。抽選による永住権とは、アメリカ合衆国を構成する人種の中で、移民比率の比較的低い国からの移民の数を増やそうとする目的で、年に一回国務省によって行われる移民多様化プログラムのことです。申請は無料、オンラインで申請を行ない、抽選者はコンピューターにて無作為に選ばれます。対象となるのはアフリカ、アジア、ヨーロッパ、北米、南米とオセアニアなど6つの地域から過去5年間において、移民ビザの発給少ない国で出生した人で、抽選で年間で合計5万件の移民ビザが割り当てられます。日本で出生した人も抽選の対象となりますが、 過去5年間に5万人以上の移民を米国に送り出した下記の国の出身者は対象にはなりません: バングラディッシュ、ブラジル、カナダ、中国(本土生まれ)、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、ハイチ、インド、 ジャマイカ、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、フィリピン、韓国、イギリス(北アイルランドを除く)とその領土、ベトナム。香港、マカオ、台湾出生者は対象となります。本人が対象国で出生していなくとも、配偶者が対象国で出生していれば、その配偶者の出生国で申請することも可能です。一人一回だけの抽選ですが、本人の申請とともに配偶者と21歳未満のお子様も一緒に申請することができます。一人につき2回以上申請をすると、すべての申請が無効となります。

申請方法は、オンラインリンクhttp://www.dvlottery.state.gov/にアクセスし、申請者の氏名、生年月日、出生地、出生国、居住国、住所、emailアドレス、電話番号、学歴、婚姻関係、配偶者情報、子供の情報など基本的な個人情報を入力します。デジタルも写真も添付し、オンラインで提出します。提出がおわると、名前と固有の確認番号が明記されている確認画面が表示されます。応募状況については、2016年5月3日より国務省のサイト www.dvlottery.state.gov で確認することができます。また、ビザ手続きのインストラクションや面接日時もEntrant Status Check上で通知されます。抽選結果については、通常翌年の5月以降に国務省のウエブサイトにて確認できます。

抽選による永住権を申請するには、まず申請資格を満たさなければなりません。まず、申請者は高校卒業あるいは同等の教育を修了している必要があり、小・中・高校での12年間の公認の教育課程を修了したことを証明できること、または、 少なくとも2年間の研修か実務経験を必要とする職業(米国労働省の定める基準に準ずる)に過去5年以内に2年以上従事していことが条件となります。米国労働省の職業基準に関してはO*NET OnLine (http://www.onetonline.org/)で確認できます。さらに、申請者は犯罪暦の有無やテロ国支援国家の出身であるかなど、米国移民法の要件を満たしているか審査されます。

永住権の資格条件を満たさない応募者の数も考慮して、当選者は申請枠よりもかなり大目に選ばれますので、当選しても必ずしも皆が皆申請を行なえるわけではありません。受領番号の若い順に申請を行ないますが、当選者は自分の順番がまわってくるまでは永住権の申請書類を提出できません。2017年の9月末までに順番が回ってこなかった場合、もしくはその年の永住権発給枠が達成してしまったら、当選者の永住権申請の受付は終了します。したがって、当選したらすぐにケース番号を確認し、順番が回ってきたら、速やかに申請を行うことが大切です。もし順番がまわってくる前に永住権受付が終了した場合、翌年度の抽選に再度申し込むこともできます。

執筆:大蔵昌枝弁護士, フィッシャー・ブロイルズ法律事務所
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2015年9月: 外国人の新規採用オプション

ここ数年のH1Bの年間枠が大幅に不足しているために、若手の採用ができなくて困っているという声を頻繁に耳にしますが、H1B以外のビザで新卒者、もしくは若手を採用できるオプションを紹介いたします。

  • OPT就労許可証

学生であれば、OPT (オプショナル・プラクティカル・トレーニング)が有効である間は、引き続きOPTで雇用を継続することができます。理数系などSTEM学位に該当する学生であれば、従来の12ヶ月間のOPTをさらに17ヶ月延長することができますので、引き続き雇用を続けることができます。ただし、OPTを17ヶ月延長するためには雇用主はE Verifyに加入していることが条件ですので、E Verifyが強制されていない州の雇用主はご注意ください。E Verifyに加入すると、新規採用社員は皆このシステムでソーシャル・セキュリティー番号をチェックする義務が課せられます。

  • CPT就労許可証

学生にはOPTのほかにも、CPT (カリキュラム・プラクティカル・トレーニング)という就労資格があり、これは学校のカリキュラムの一環としての企業でのインターンシップなど研修が学校の単位になるもの、もしくは担当学部が企業での仕事が専攻学位の理解に必要であると認めた場合に、許可される就労許可証です。CPTはOPTとはことなり、移民局に就労カードの申請は行いませんが、まず学部の許可を得て、それをもとにインターナショナルオフィスに報告をし、I-20にCPT開始の裏書をもらいます。学校はその旨をSEVISシステムに登録し、移民局に報告を行います。CPTは12ヶ月まで申請できますが、12ヶ月を全部つかってしまったら、OPT申請の資格を失いますので注意が必要です。

  • J1とH3研修ビザ

CPTもOPTも償却した場合、もしくは米国外にいる人であれば、米国にて短期の研修を行なうこともできます。研修ビザにはJ1とH3がありますが、J1は関連学位や経験がある人が対象で、H3は関連学位経験がない人が対象となります。J1研修ビザはアメリカ以外の国の大学や短大を卒業して、さらに米国以外で1年以上の関連職務経験があれば、J1スポンサーの企業研修プログラムを通して、最長18ヵ月(旅行業界の場合は12ヶ月まで)まで研修を行うことができます。米国以外の国で学位を取得していない場合は、米国外で5年間の関連職務経験があることが条件です。しかしながら、レストラン産業や人材派遣業界はJ1の研修をすることができなくなりました。さらに、最近では危険物に接するような製造業の工場内での研修も審査が大変厳しくなっているようです。また、日本国籍者には該当しませんが、出身国によっては、研修終了後2年間の本国滞在要求が課せられることがあるので、事前にJ1スポンサーや専門家に問い合わせた方がよいでしょう。

H3研修の場合は、未経験者を対象としていますが、オン・ザ・ジョブ・トレーニングが許されるJ1とはことなり、H3研修は教室内での講義を主体としているため、現場での研修は最小限におさえなければなりません。最長期間は2年間ですが、2年間を使いきってしまうと国外に6ヶ月間滞在しなければ再度H-1BやLビザで米国に入国することができなくなります。J1もH3もいずれも企業内研修を通じて自国では得られないような技術を米国で学ぶことにより、研修終了後は自国に帰り、その知識や経験を生かすことを目的としています。また、J1企業研修は、研修や技術の向上が主目的であるため、正規従業員のように生産的業務に従事することはできません。

その他に短期間の研修である場合は、ビザ免除のESTAやB1商用ビザで研修を申請する可能性もありますが、研修期間中も米国外の企業での雇用が続いており、米国内では報酬をうけないことが条件です。その他にも細かい注意があるので、専門家の意見を伺ったほうがよいでしょう。

  • TNビザ

カナダやメキシコ国籍保持者であれば、NAFTA条約によるTNビザを申請する選択肢があります。TNビザには年間枠がないため、年中いつでも採用が可能です。ただし、TNビザの場合は、NAFTAの特定職業リストにある職種への就労に限られおり、特定の学位を修了したものに限ります。主に技術系の学位取得者が対象となりますが、会計や経済アナリストなど文系学位もいくつかリストに含まれています。同じTNビザでも、カナダ国籍保有者とメキシコ国籍保有者とでは申請方法が異なるので注意が必要です。

  • E3ビザ

 カナダやメキシコ国籍保持者以外でも、オーストラリア国籍者専用のE3ビザで若手を採用することができます。このビザは、もともとH1Bの内容で大卒者対象に作られた専門職ビザですが、H1Bには年間枠があるため、Eビザ・ファミリーにいれらました。したがって、条件はH1Bとほぼ同じですが、年間枠がありませんので、年中いつでも採用が可能です。

  • 特定ビザ保持者の配偶者

LビザやEビザやJ1ビザ保持者の配偶者は就労許可証を申請することができます。配偶者の就労許可証には職種の制限がないために、採用が比較的自由にできます。また、H1B配偶者も最近の法律改正で、永住権の申請を始めて一定条件を果たせば、就労許可証を申請できるようになりましたので、ポジションの資格条件を持たす人がいれば、採用条件が比較的自由です。

  • 国外の関連会社で採用

若手を採用するためには、上記のオプション以外にも、とりあえず米国外の関連会社での雇用を検討し、来年度のH1B申請時期までまつか、LやEビザの資格条件をみたすまで国外の関連会社で技術や知識をつけるという方法もあります。その間出張目的で米国に短期間来ることは可能ですが、米国内で米国企業の利益になるような業務についたり、米国内で収入を得たりすることはできません。

執筆:大蔵昌枝弁護士, フィッシャー・ブロイルズ法律事務所
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2015年8月: オバマ大統領による移民法近代化法案

2015年7月にオバマ大統領は移民法近代化法を提案しました。移民法関連手続きは、ビザの種類によって、連邦移民局以外に国務省、労働局、入国管理局など、いろいろな政府機関が絡む複雑な手続きとなっております。以前はすべて紙面やファックスによる提出を求められていましたが、数年の努力を経て、出入国情報(I-94)、ビザ免除(ESTA)手続き、米国大使館・領事館でのビザ申請書類であるDSフォーム、移民局への住所変更届け(AR-11 フォーム)、平均賃金申請、H1B 申請に必要な労働局のLCA申請手続き、 永住権申請の第1段階である労働局へのPERM Labor Certificationの申請手続きなどはすでにオンライン化されました。申請書類のシステム化の努力は引き続き行われる一方、各種移民・非移民ビザに関する法律自体、見直しを必要とされています。この法案はまだ最終的なものでありませんが、顕著な改善点を2つほど説明いたします。

現状の移民法では、短期非移民ビザで就労しているものは、解雇や会社閉鎖などにより雇用が終了した時点で滞在資格がなくなってしまいます。例外として、H1B保持者はH1Bの承認期限を満了した場合に限って、雇用終了から10日間の猶予期限があたえられます。しかし、期限満了前に雇用が終了した場合、その時点でオーバーステイが始まってしまいます。雇用が終了する前に新雇用主が雇用主変更申請を移民局に提出した場合は、米国内にとどまってその結果をまつことができますが、雇用終了後に次の雇用主が見つかった場合、一旦国外に出国して、新しいビザが承認されるまで米国に入国はできなくなります。10年以前くらいまでは、移民局も途中解雇されたものが次の雇用主がみつかるまで数週間から1~2ヶ月くらいのオーバーステイがあっても、米国内での雇用主変更申請を承認することが多くみられました。しかしながら9/11以降は、政府は外国人のオーバーステイに対して非常に厳しく管理するようになり、一日でもオーバーステイがあれば、米国内での雇用主の変更は認めず、申請者は一旦国外にでてビザを申請して入国するように指導するようになりました。この現状を改善すべく、今回のオバマ大統領の移民法近代化法案では、短期非移民ビザ保持者が雇用終了後も、次の職場がみつかるまで米国内に合法に居残ることができるように、雇用終了後の猶予期間(グレイスピリオド)を設けるように提案しています。

また、永住権申請に関しては、現在の移民法では、雇用主スポンサーによる永住権の申請を行ったものは、永住権が承認されるまで、職場を変わることが非常に難しくなっています。現状では雇用主スポンサー移民申請(I-140)が承認されても、個人は永住権申請申請(I-485)を提出して6ヶ月間が経過するまで、転職をすることができません。過去にはI-140が承認されてからI-485を申請するまで2~5年ほどの待ち時間があったため、その間は仕事を変える自由が失われてしまいました。また、現法ではI-140提出後、I-485の順番がまわってくるまでの待ち時間の間に会社が閉鎖したり、他州の拠点に併合された場合、申請した場所での雇用がなくなるため、永住権の申請が中断してしまいます。この状態を改善するために、今回の法案では個人の仕事の選択の自由を促進するように、I-140が承認されて1年が経過していれば、仮に元の会社が閉鎖しても、また元の雇用主がI-140を取り下げても、個人が自由に転職できるよう法律を改正するように提案しています。この法案は確かに個人にとっては歓迎すべき改善ではありますが、多大な資金をつかって社員の永住権をサポートする雇用主にとっては、まだ永住権が承認されるまえに社員を失う可能性が大きくなるため、永住権スポンサーに対して慎重にならざるをえなくなるでしょう。

これに対し、雇用主からは永住権をサポートする代わりに、一定期間内に退職した場合は、永住権申請にかかった費用を個人に返済してもらうように合意を作成したい、という意見も伺われます。ただし、永住権申請過程の中には法律上個人が負担してはならない費用項目もありますので、このような合意書を作成する場合は、必ず雇用法と移民法の弁護士の意見を求めたほうがよいと思われます。

執筆:大蔵昌枝弁護士, フィッシャー・ブロイルズ法律事務所
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2015年7月: 関連会社間転勤用ビザ

日本やアメリカ国外の企業からアメリカの関連会社に派遣される場合によくつかわれるビザに関連企業間転勤のL-1 ビザがあげられます。会社がLビザに該当するには米国の雇用主と米国外の派遣元の会社が親会社、支社、系列会社、子会社などの資本関係がなければなりません。また、派遣元会社もアメリカの企業も両方とも継続的に事業を営んでいなければなりません。派遣社員は、過去3年の内最低1年以上米国外の関連会社で勤務経験があり、かつ役員・管理職用のL-1Aビザか特殊技能・知識者用のL-1Bビザの条件に該当しなければなりません。会社も派遣社員もこれら条件を満たせば、Lビザを申請することができますが、申請方法には3通りあります。 (1)Lビザ普通申請、(2)ブランケットL申請、(3)通勤者用L申請、のいずれの方法で申請を行うのがベストか判断していきます。

L-1ビザ普通申請    Lビザは、基本的には2段階の申請を経なければならなりません。まずは、アメリカの雇用主が移民局に対して、派遣社員のLビザ雇用申請を行います。移民局に申請が承認されたら、本人は移民局からの承認通知書をもって、在外の米国大使館もしくは米国領事館にてビザ面接をおこない、ビザ・スタンプを発行してもらってから、入国することになります。近年米国移民局の審査基準が大変に厳しいため、移民局への申請に対し、追加証拠の要請が来る確率が非常に高くなっていますし、審査時間が長引くと赴任予定日が大幅におくれることがあります。そこで、同じLビザでも、Eビザのように直接米国大使館でビザを申請する方法を紹介します。

ブランケットL   国内外に最低3つの関連会社をもち、さらに(1) 直近12ヶ月に10人以上のLビザの承認を得ている; (2) 米国内の関連会社の合計総売上げは$25 ミリオンドル 以上ある; もしくは(3)米国内で1,000人以上の従業員を雇用していれば、Lブランケットを申請することができます。L-ブランケットとは、包括申請のことで、関連会社間の移動を円滑にするためにできたものです。最初は国内外の関連会社のリストを移民局に提出してLブランケットを申請します。Lブランケットが承認されれば移民局の承認通知書には関連会社のリストがついてきます。Lブランケットは最初は3年有効ですが、延長時には無期限有効の承認通知書がとどきます。このブランケット通知書があれば、派遣社員は移民局にL申請を行う必要がなくなります。派遣社員はこの会社リスト付のブランケット承認通知書とビザ申請書類を国外の米国大使館に持参し、直接に面接審査を行います。面接に問題がなければ3~7日ほどでビザが送られてきます。この方法の利点は移民局の個別申請を避けることができるため、ビザ入手までの期間が大幅に削減できることです。また関連企業リストにある会社であれば、事前に移民局に雇用主変更申請を行う必要はなく、関連会社間の移動が自由になります。ただし、皆が皆Lブランケットを申請できるわけではありません。創業1年未満の新規企業はブランケットを申請できません。また、L-1B申請者は大卒であることが条件となります。

通勤者用 L 通常、役員・管理職用のL-1A滞在資格は最長7年、特殊技能・知識者用のL-1Bビザ滞在資格は最長で5年までしかありません。しかし、最長期限をこえてLビザを延長できる場合があります。これはIntermittent L(断続的L)もしくはCommuter L(通勤用L)といいますが、一般に米国外に住所があり、米国には短期間滞在、もしくは米国での直近の滞在期間が半年以下であった場合、Lビザの延長回数に制限がなくなります。例えばカナダやメキシコに住みアメリカには出張でたまにしか来ない場合、もしくは、日米兼任でアメリカには1年のうち半年も滞在しない場合、Lビザの最長期限をこえてビザもしくは滞在資格をさらに延長することができます。ただし、米国の訪問・滞在目的がLビザ役員・管理職の任務遂行、もしくはLビザ特殊技能職の趣旨と一致していなければ延長はできません。尚、アメリカでの滞在期間が1年間の内6ヶ月をこえたら、通勤者用Lビザの資格を取り消されることがあるので要注意です。

執筆:大蔵昌枝弁護士, フィッシャー・ブロイルズ法律事務所

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