H1B平均賃金レベルの上昇

新卒者がよく使う短期就労ビザには専門職ビザのH1Bがありますが、近年H1Bの審査基準が大変厳しくなり、追加証拠の要請が来る確率も非常に高くなっています。加えて、今年4月にトランプ大統領により “Buy American Hire American” という大統領令を発令され、労働局、移民局、国務省など各政府機関は、アメリカ人の採用を優先するように具体的な措置を取るように指示をうけました。これを受けて、米国大使館・領事館でも、ビザ面接後に追加情報の提出を求められ、ビザの発行が遅れるケースも見られるようになりました。移民局もまた、就労ビザなどの審査基準をより厳しくしているようです。

平均賃金順守義務: 他の短期就労ビザとは異なり、H1Bには平均賃金の順守義務があります。雇用主はH1B社員が就労する地域におけるそのポジションの平均賃金、もしくは同職社員に支払う賃金のいずれかの高いほうを支払わなければなりません。永住権の申請では、労働局が平均賃金のレベルを決定しますが、H1Bの場合は、申請企業がそのポジションに妥当な平均賃金を選び、その額を労働条件申請書 (Labor Condition Application) に記入して、オンラインで申請することができます。労働局はその賃金がポジションと該当地域に妥当であると判断すれば、労働条件申請書を承認します。雇用主は承認された労働条件申請書をH1B申請書類と一緒に移民局に申請します。

平均賃金レベル: 平均賃金には4レベルありますが、新卒者など関連職務経験0から2年までを条件としているようなポジションであれば、通常一番低いレベル1の平均賃金が該当します。職務経験を4年以上必要とするようなポジションであれば、一般に一番高いレベル4の平均賃金を使います。その他には、特殊な技術や知識をポジションの条件としたり、また通訳や外国語教師以外のポジションに外国語を条件とすれば、平均賃金のレベルは一つ上がっていきます。例えば、フルトン・カウンティーのメカニカル・エンジニアの平均賃金は、本年度でレベル1が$59,696、レベル2が$72,571、レベル3が$85,426、レベル4が$98,301となっています。日本語をポジションの条件とすれば、平均賃金レベルがさらに一つ上がります。

追加証拠要請: 今年4月に、主に東部を管轄する移民局のバーモント・センターは、平均賃金のレベル1か2で申請したほとんどの雇用主に対して、追加証拠の要請を出しました。過去は文系の職種のほうが審査が厳しく、アメリカ国内のエンジニア不足から、理数系のポジションは比較的無難に審査されていました。ところが、今年はエンジニアなどの理数系のポジションでさえ、平均賃金が低い場合は追加証拠の要請が発行されています。追加証拠の要請には、(1) 職務内容が専門的であるために、エントリーレベルのポジションだとは思われないので、平均賃金レベル1は妥当な賃金レベルではない、(2) 平均賃金レベル1は専門的なポジションとはみなされない、(3) 上記1番と2番の両方、などといった理由が書かれています。しかしながら、H1B専門職に平均賃金レベル1の使用を禁止するような法的条項はなく、さらに、H1Bプログラムが1990年度に始まってから、移民局は平均賃金レベル1の申請を承認してきています。また、賃金に関する問題は労働局の管轄であるために、移民局は過去には平均賃金のレベルに対するコメントは控えていました。

今回の平均賃金騒動は、アメリカ人の採用を優先する大統領令の方針に沿った新しい措置だと思われますが、法律自体を改正するまえに、政府機関が先走っているようにも見受けられます。すでに、4レベルの平均賃金を3レベルに変更し、一番低い平均賃金額を引き上げようとする法案も提出されています。また、企業内転勤に使われるLビザにも平均賃金制度を適用すべきという法案もあがっています。今後、H1Bの平均賃金がどのように変わるのか、また他の就労ビザにも平均賃金順守が義務化されるのか、今後の法案の動向を見守り、雇用主もそれに応じて、社内の賃金体系を見直す必要がでてくるでしょう。